仙台地方裁判所 昭和61年(わ)821号 判決 1988年7月15日
国籍
中国
住居
仙台市八幡一丁目三番二一号 ドルミ八幡五〇六号
医師
李錫昌
一九三五年五月一五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官向井壯出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金三六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、昭和五六年から宮城県遠田郡小牛田町牛飼字清水江一三番地に「光仁病院」の名称で事業所を設け、これに加えて同五九年三月から同県本吉郡本吉町泉一〇六番地に「小泉診療所」の名称で事業所を設けて医療保健業を営み、事業主としてその業務全般を統括していたものであるが、自己の所得額を免れようと企て、窓口現金収入の一部及びリベート収入の全部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和五七年分の実際総所得金額は六六、七〇一、八五八円で、これに対する所得税額は二八、七二四、九〇〇円であったにもかかわらず、同五八年三月一五日、同県古川市幸町一丁目二番一号の所轄古川税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二一、二四二、五二六円で、これに対する所得税額が八一九、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同五七年分の正規の所得税額と右申告税額との差額二七、九〇五、〇〇〇円を免れ、
第二 昭和五八年分の実際総所得金額は八六、六七六、一一三円で、これに対する所得税額は四二、二八二、九〇〇円であったにもかかわらず、同五九年三月一四日、前記古川税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三〇、一〇二、二八三円で、これに対する所得税額が四、九五五、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同五八年分の正規の所得税額と右申告税額との差額三七、三二七、四〇〇円を免れ、
第三 昭和五九年分の実際総所得金額は一一六、六四〇、六一五円で、これに対する所得税額は五九、七二二、一〇〇円であったにもかかわらず、同六〇年三月一五日、前記古川税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三二、九九三、四五八円で、これに対する所得税額が五、四三四、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同五九年分の正規の所得税額と右申告税額との差額五四、二八七、五〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 第五回及び第六回公判調書中の被告人の各供述部分
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二五通
一 被告人作成の大蔵事務官宛の上申書三通
一 米倉千栄子(八通)、高俊傑(二通)及び岩渕みどりの大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 早川靖文の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の所得税の青色申告の承認取消し通知書の謄本
一 大蔵事務官作成の青色申告額控除否認額調査書
一 大蔵事務官作成の告発書
一 大蔵事務官作成の雑収入(キャッシュ・バック)等調査書
一 大蔵事務官作成の貸倒引当金調査書
一 大蔵事務官作成の利子所得調査書
一 大蔵事務官作成の源泉徴収税額調査書
一 大蔵事務官作成の雑所得調査書
一 大蔵事務官作成の報告書四通
一 大蔵事務官作成の写真撮影報告書三通
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五七年一月一日至同年一二月三一日分)
一 被告人作成名義の昭和五七年分所得税確定申告書の謄本
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五八年一月一日至同年一二月三一日分)
一 被告人作成名義の昭和五八年分所得税確定申告書の謄本
判示第三の事実につき
一 被告人作成の仙台地方裁判所宛の上申書(昭和六三年三月一四日付)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書二通(自昭和五九年一月一日至同年一二月三一日分)
一 被告人作成名義の昭和五九年分所得税確定申告書の謄本
一 三澤壯義作成の調査報告書
(法令の適用)
被告人の判示第一ないし第三の各行為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するが、いずれも懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条によりもっとも犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑についてはいずれも所得税法二三八条二項、刑法四八条二項を適用して各免れた所得税の額を合算した金額の範囲内で、被告人を懲役一年六月及び罰金三六〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、懲役刑については情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 渡邊達夫 裁判官 須藤浩克 裁判官 五戸雅彰)